www.mamboteam.com
科学技術社会論学会 (Japanese Society for Science and Technology Studies)  
Home arrow 柿内賢信記念賞 arrow 2008年度 arrow 2008年度柿内賢信記念賞研究助成金の選考結果
2019/09/16 Monday 02:10:39 JST
 
 
2008年度柿内賢信記念賞研究助成金の選考結果 PDF プリント メール

2008年度柿内賢信記念賞研究助成金の選考結果について(講評)

選考委員会委員長
宗像慎太郎(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
審査委員(五十音順)
上田昌文(NPO法人 市民科学研究室)
調麻佐志 (東京農工大学)
塚原修一(国立教育政策研究所)
白楽ロックビル(お茶の水女子大学)
平田光司 (総合研究大学院大学)

科学技術社会論学会では、財団法人倶進会のご厚志をいただいて2005年度から「柿内賢信記念賞研究助成金」を設け、対象を会員に限定せずに広く公募しています。4回目となる今年度は、17件(記念賞0件、奨励賞10件、実践賞7件)の応募がありました。2007年度の23件には及ばないものの、応募件数は確実に伸びており、本事業の知名度の高まりと定着を実感できるレベルとなって参りました。当学会は本事業をさらに進め、科学技術社会論の発展と研究者の支援に努めて参ります。

受賞者・受賞研究の選考に当たり、当学会では理事会のもとに研究助成金選考委員会を設置して慎重に審議を重ねた結果、下記のとおり奨励賞2件、実践賞1件を授与することと決定いたしました。記念賞については、受賞者なしといたしました。

奨励賞:

東島 仁「自閉症スペクトラム障害の遺伝的側面の研究から生じる倫理・社会的課題の抽出と分析」
山本 圭「ウェブ・アーカイビングが民主主義にもたらす影響の研究」

実践賞:

小林 俊哉「国内環境研究者の環境影響・社会的影響に配慮する意識の研究」

<研究内容要旨は別紙参照>

選考を振り返って

1. 選考方針について

1-1. 基本方針と選考プロセスの概要

選考に当たっては、「科学技術と社会の界面に生じるさまざまな問題に対して、真に学際的な視野から、批判的かつ建設的な学術的研究を行うためのフォーラム」という、当学会の設立趣旨を重視いたしました。この結果、純粋な自然科学研究及び事業開発とみなされる案件は対象外とさせていただきました。また各候補については、応募とは異なる部門における授賞の可能性も検討しましたが、受賞者は結果的に、いずれも応募部門での受賞となりました。

1-2. 各賞について

「奨励賞」に関しては、「今後の研究の発展が期待されるか否か」という視点を加えて審査を行いました。「実践賞」に関しては、「実践的活動を踏まえた」研究提案か否かという視点で選考いたしました。科学技術社会論は従来の学術研究の手法や流儀に尽きるものではなく、広く社会的に提言や発信を行うことも視野に入れており、本賞では、「実践的活動を踏まえた」研究を支援するものです。

2. 選評

奨励賞:

東島 仁「自閉症スペクトラム障害の遺伝的側面の研究から生じる倫理・社会的課題の抽出と分析」

東島氏の研究は、自閉性スペクトラム障害(以後ASDs)の当事者集団とASDs研究関連アクターを対象としたインタビュー調査・質問紙調査・文献調査を実施し、生命科学的研究を遂行する際に考慮すべき社会・倫理的課題を抽出する、というものです。氏の研究は、科学が社会問題を取り扱う際に、研究プロジェクトと当事者の関係をどう整理し、どのように研究設計に織り込むべきか、というSTS上の大きな課題に正面から取り組むものとして評価されました。

氏は先行して実施したインタビュー調査を通じ、既に「行動遺伝学における社会的・倫理的課題の背景には、関係者間のコミュニケーション上の問題がある」という仮説をお持ちです。氏の研究計画はこの仮説の検証には足るものであるばかりでなく、生命科学研究がその対象者の認識・意見を研究計画に反映するための設計手法のあり方について示唆を得ることも可能であろうと期待されます。

山本 圭「ウェブ・アーカイビングが民主主義にもたらす影響の研究」

山本氏の研究は、Web上で次々と生成・消去していく膨大な情報を収集し保管する「ウェブ・アーカイブ」という比較的新しい取り組みを対象として、その現状と民主主義社会へのインプリケーションを分析する、というものです。市民社会のエンパワーメントにも繋がる反面、社会監視とも言える側面を持つこの取り組みが民主主義にどのような影響を与えうるのか、という氏の問題設定は大変興味深く、本学会による表彰に相応しいものと評価されました。

選考においては、本研究の論理基盤とすべき先行研究や具体的な研究方法が定かではない、という点が論点となりましたが、氏が大学院生であること、将来の展開を期待するという奨励賞本の位置づけを考慮して、最終的には受賞が決定しました。

実践賞:

小林 俊哉「国内環境研究者の環境影響・社会的影響に配慮する意識の研究」

小林氏は、環境対策技術自体が社会にとって新たな脅威を生みうるものである、という切り口で、近年の環境ブームを見つめ直すという研究を提案されています。具体的には、環境対策技術の研究に携わる研究者がこの問題をどのように捉えているのか、いかなる経緯でそのような考えを持つに至ったのかなどについて、アンケート調査とインタビュー調査を計画されています。STSにおいては、やや社会性の高い科学者集団とみなされる傾向にあった環境科学・工学分野の研究者を批判的に見つめ直すという点が評価されました。

氏は1997年から1999年にかけ、国内研究者の環境意識に関するアンケート調査を実施しており、本研究はその成果を引き継ぐものです。選考においては、収集される情報の分析方法が論点となりましたが、本研究の意義と小林氏の研究業績を考慮して、最終的には受賞が決定しました。

3. 総評

第四回と回を重ねた本賞ですが、今年度は例年以上に、選出までの過程で研究手法の妥当性や実践との連関について多くの議論が交わされました。このことは、STS研究の学際性や実践性を反映するものであり、本賞を含む当学会の活動を通じてSTS研究者間で多様な方法論や研究・実践手法を共有することが如何に困難な作業であるかを示しています。今回受賞者の研究が、単独の研究として優れた成果を生み出すだけではなく、STSの知的共通基盤の形成に貢献されることを期待します。

最終更新日 ( 2009/05/07 Thursday 20:07:37 JST )
 
< 前へ
 
Top! Top!