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科学技術社会論学会 (Japanese Society for Science and Technology Studies)  
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2017/04/27 Thursday 04:43:18 JST
 
 
2010年度柿内賢信記念賞研究助成金の選考結果 PDF プリント メール

2010年度 科学技術社会論学会・柿内賢信記念賞

選考結果について

選考委員(五十音順)、*委員長
井口春和(核融合科学研究所)
柄本三代子(東京国際大学)
*黒田光太郎(名城大学)
白楽ロックビル(お茶の水女子大学)
桃木暁子(京都精華大学)

科学技術社会論学会では、財団法人倶進会の厚志をいただき、2005年度から「科学技術社会論・柿内賢信記念賞」(「かきうち よしのぶ」と読む)を設け、会員・非会員を問わず公募しています。6回目となる今年度は、8月末の締切を延長して9月15日までに、13件(学会賞4件、奨励賞5件、実践賞4件)の応募がありました。

選考委員会では公募終了後から約1ヶ月かけて、慎重に審議を重ね、下記のとおり学会賞1件、奨励賞1件、実践賞1件を授与することと決定いたしました。

【選考結果】

 

学会賞:

  • 小川眞里子「アジアにおける女性研究者に関する科学社会論的研究」
    研究助成金 50万円

 

奨励賞:

  • 小門穂「生殖補助医療の規制作りにおける市民参加―フランス生命倫理全国国民会議の検討から―」
    研究助成金 30万円


実践賞:

  • 立花浩司「ライフサイエンス分野におけるラボラトリースタディーズの検討-大学を中心として-」
    研究助成金 40万円


<研究内容要旨は別紙参照>

【選考を振り返って】

今年度は8月下旬に「第35回科学技術社会論学会(4S)と第9回科学技術社会論学会年次大会合同会議」が開催された影響もあって、当初設定した応募締切日8月31日までに応募が少ないことが懸念されたため、8月下旬に応募締切を9月15日までに延期しました。

選考に当たっては、「科学技術と社会の界面に生じるさまざまな問題に対して、真に学際的な視野から、批判的かつ建設的な学術的研究を行うためのフォーラム」という、当学会の設立趣旨を重視いたしました。この結果、純粋な自然科学研究あるいは事業開発とみなされる申請は高い評価を得られませんでした。また各候補については、応募とは異なる部門における授賞の可能性も検討しましたが、受賞者は結果的にはいずれも応募部門での受賞となりました。

「学会賞」に関しては「科学技術社会論の分野で実績があるか」を重視して、「きわめて優れた実績」か否かという視点で選考いたしました。「奨励賞」に関しては、「今後の研究の発展が期待されるか否か」という視点を加えて審査を行いました。「実践賞」に関しては、「実践的活動を踏まえた」研究提案か否かという視点で選考いたしました。

選考に当たって、選考委員5人は各人の基準で選考しましたが、選考委員の専門、経歴、年齢、性別、地域など、多様であり、結果的にその価値基準の多様さが反映された審査であったといえます。

【選評】

学会賞:
小川眞里子「アジアにおける女性研究者に関する科学社会論的研究」

小川眞里子氏は、三重大学・人文学部文化学科・教授として、少なくともここ10年間は、科学技術がジェンダーとクロスする領域の日本を代表する研究活動を進めてこられました。最近は、『Gender and Science: Studies across Cultures』(Cambridge University Press India Pvt. Ltd., forthcoming)に"Japanese Women Scientists: Trends and Strategies"のタイトルで論文を、また、『フェミニズム理論』(2009年、岩波書店)で「科学知識とジェンダー」(260 -273頁)の論文を発表しています。他に5冊の著書、10冊の翻訳書、6編の学術論文を発表し、日本の女性研究者問題を日本社会および国際社会に提示してきました。とりわけ、2005年からアジアにおける女性研究者問題に焦点を絞った活動を続け、本申請では、韓国、台湾、日本という類似点が多いアジアの3カ国に、インドを加えた4カ国の理系女性研究者について、社会学的問題を洗い出し解決に向けての討論をするワークショップの開催を計画しています。このように、理系女性研究者問題を科学社会論的にしかも国際的に研究する点が小川眞里子氏のユニークな点であります。理系女性研究者問題の解決に向けての可能性を、実践および理論の両面から国際的に研究することは、科学技術社会論学会の研究活動のあるべき姿の1つとの認識から「学会賞」に値すると判断しました。

奨励賞:
小門穂「生殖補助医療の規制作りにおける市民参加 - フランス生命倫理全国国民会議の検討から - 」

 

小門氏の研究は、生殖補助医療という人間の価値観に深くかかわる技術が社会に浸透する際に、社会はどう対応するのか、という先進国共通の課題に関するものです。具体的には、フランスにおける生殖補助医療に関する規制作りへの「市民参加」のあり方を明らかにし、それによって日本におけるルール作りに寄与しようとするものです。フランスでは、生殖補助医療を規制する「生命倫理法」(1994 )が2010年に改正されるのに先立って、市民参加を目的として「生命倫理全国国民会議」が組織されました。本研究では、この「生命倫理全国国民会議」と生命倫理法改正そのものに関して、文献調査と関係者へのインタビューを行い、市民参加が必要とされた背景、法改正の過程で市民参加がもつ重み、参加した市民の認識がどのようなものか、を探ろうとします。

フランスでは従来、科学技術政策への市民の参加が少なく、議会と専門家だけで政策決定を行ってきました。これは日本と似た情況です。そのなかで、上記の生命倫理法の改正にあたってなぜ市民参加が必要とされたのでしょうか。小門氏の研究によって生殖補助医療に関する領域での市民参加の実態が明らかにされれば、その成果は日本における同じ領域での対応を検討するうえで大いに参考になるでしょう。

高いフランス語運用能力に支えられたこの小門氏の研究は、英語の情報が十分とはいえない非英語圏の国や地域の情況を直接、適確に把握できるという意味でも、たいへん価値あるものです。

実践賞:
立花浩司「ライフサイエンス分野におけるラボラトリー=スタディーズの検討――大学を中心として」

 

国家的プロジェクトの一貫としても今後の研究成果拡充が期待されているライフサイエンス分野ですが、若手研究者の質の低下が指摘されていることや、アカデミックポストの不足が顕著であることを立花氏は問題視しています。これを前提として、ラボラトリー=スタディーズの手法により、ライフサイエンス系大学研究室内における科学的知の生産過程、およびキャリア形成をめぐる若手研究者たちの考えや行動などを明らかにすることを研究目的としています。

実践賞であるからには、とくに若手研究者のキャリア開発に関する新たなる知見の獲得を大いに期待しています。またこれまでにも立花氏は、サイエンスコミュニケーションにかかわる活動を積極的に行ってきているので、科学者側からみたコミュニケーションのさらなる可能性を探る研究としても成果が得られることを期待しています。

調査対象となる研究室とのラポールをいかに築いていけるか、といった困難が予想される参与観察の技法を用いますが、この種の困難はフィールドワーク調査につきものです。数々の困難をクリアし、研究者集団の今後の実践に貢献することを願っております。

【総評】

選出までの過程で研究手法の妥当性や実行可能性などについて多くの議論が交わされました。このことは、STS研究の学際性や実践性を反映するものであり、本賞を含む当学会の活動を通じてSTS研究者間で多様な方法論や研究・実践手法を共有することが如何に困難な作業であるかを示しています。今回受賞者の研究が、単独の研究として優れた成果を生み出すだけではなく、STSの知的共通基盤の形成に貢献されることを期待します。来年度は多数の応募があることを期待して、本年度の選考を終えます。

【統計データ】

 統計データ

最終更新日 ( 2011/01/17 Monday 17:42:49 JST )
 
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