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科学技術社会論学会 (Japanese Society for Science and Technology Studies)  
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2017/05/30 Tuesday 10:19:33 JST
 
 
2010年度受賞者の研究計画要旨 PDF プリント メール

2009年度受賞者
研究計画要旨

学会賞

小川眞里子 「アジアにおける女性研究者に関する科学社会論的研究」

女性研究者の増加をめざす施策は、アメリカやEUで2000年前後から熱心に推し進められてきている。これに対しアジアの国々が無関心であったわけではないが、外への情報発信は遅々として進まず、欧米からはアジアの女性研究者の動向に関する情報を強く求められるようになっていた。

そこで応募者は2005~07年トヨタ財団や科研費基盤研究C(企画調査)の助成を受けて国際ワークショップを開催しアジア各国の女性研究者の概要の把握に努めた。その後、このワークショップを継承する形で、韓国や台湾でも会議(欧米からの参加者も含む)が開催された。こうした経緯を経てアジアの女性研究者の問題は、とりあえず韓国・台湾・日本という比較的類似点をもった3カ国における理系女性研究者について、科学社会学的視点から互いに啓発し合い、解決に向けた努力を行うことが現実的であると判断するようになった。

従来は多くの国の理系女性研究者が互いの現状を報告する会合であったが、これを改め、韓国・台湾・日本の3カ国で2011年の夏に合同会議を設定し、比較の基礎となる指標を明確にした上でそれぞれの報告を行う。会議の成果は、科学技術社会論学会で研究発表を行い、『科学技術社会論研究』に寄稿する。また欧米のからの期待にこたえられるよう、英文の発信も考えたい。

過去にメンバーが一堂に会する3回の会合を経ることによって参加者の関心の摺合わせは明確になってきている。指標の一例をあげれば、■理系選択といった進路の振り分けがどのように行われているのか。■どのような制度が、女子の理系選択にいっそう好都合であるのか。■科学研究者、技術研究者というキャリアが、女性を不利にする顕著な社会的問題はなにか。■理系博士課程修了者と当該分野の女性研究者の比率は、概ね一致するものか。ひどく乖離しているのはどのような分野か。国ごとの違いがあれば、その解消の手立てを探る。■夫婦とも研究者というカップルの比率、抱える困難、その解決に向けた取り組みはどのようなものか。■企業内の女性研究者の活躍状況の比較。・・・

過去のワークショップが、各国の研究者がそれぞれの関心で多くの聴衆にむけて発表を行い、発表だけに終わりがちでディスカッションの掘り下げが足りなかった点を大いに改善して、将来へ繋がる研究としたい。

奨励賞

小門 穂 「生殖補助医療の規制作りにおける市民参加-フランス生命倫理全国国民会議の検討から-」

本研究は,フランスにおいて2009年に実施された生命倫理全国国民会議の運営委員,事務局担当者,研修担当者および参加した市民に対するインタビュー調査を実施し,フランスにおける生殖補助医療に関するルール作りへの「市民参加」について、①なぜ必要とされたのか、②法改正の中でどれくらいの重要性を持つのか、③参加した市民の認識はどのようなものかを分析することを目的とする.

フランスでは,1994年以降,生命倫理法と総称される法律群により先端医療技術が規制されており,生殖補助医療もこの枠内で管理されている.2011年初頭に予定されている生命倫理法の改正作業の一環として,これまでの議論が議会と専門家だけに限られていたという反省にたち,議論への市民参加を促進するように「生命倫理全国国民会議」が組織された.

改正における生殖補助医療に関する最大の争点は,現在禁じられている代理出産を合法化するかどうかということである.1994年法が作られてから15年経ち,禁止という原則を貫きにくくなっている状況であるといえる.代理出産を容認するかどうかは,生殖や親子関係についての価値観の反映である.「人」の領域,つまり私的な場所での思想信条に関わる多様な価値観を,これまでは一部の専門家が立法を通じ集約してきたが,そのやりかたでは対応できなくなってきた.そこで私的な領域の価値観を公共社会の領域での規制作りに取り込むための新たな回路として,「市民参加」という仕掛けが必要とされたのではないだろうかと考えている.

生殖補助医療という,従来の親子観・生殖観を揺るがす可能性のある技術が社会に浸透する際に,社会はどう対応するのかという問題は,現在,先進国共通の課題であると言えよう.本研究により,フランスにおける生殖補助医療の規制作りに対する市民参加のあり方を明らかにし,日本のルール作りにも寄与できるものと考える.

実践賞

立花浩司「ライフサイエンス分野におけるラボラトリー=スタディーズの検討―大学を中心として―」

ライフサイエンス研究は,科学技術基本計画における重点推進分野のひとつとして,予算の優先的な配分が続けられてきた.新成長戦略としてライフ・イノベーションを掲げる第4期科学技術基本計画においても,社会ニーズに対応した研究成果の期待のもとでの投資が継続されるものと考えられる.研究成果のアウトカムが期待される一方,研究活動の根幹をなす若手研究者の質低下の問題が指摘されている.さらに,アカデミックポストに就けないポストドクター(以下ポスドクと略記)の割合はライフサイエンス分野で顕著に高く,研究活動と並行して幅広いキャリア開発のための機会を提供することが,社会的な課題となっている.このような中,将来の研究者,あるいは科学知識を備えた高度専門職業人となるべきポスドクや学生達が研究室の中でどのような活動を行っているかについての文化人類学的視点,科学技術社会論的な視点からのアプローチが必需と考え,本研究は立案されている.国内でライフサイエンス分野におけるラボラトリー=スタディーズの先行研究は,管見の限り2,3を除けばなされておらず,大学の研究室におけるラボメンバーのキャリア開発も含めた視点で論じられているものに限れば,ほぼ皆無と言って良い.

このような背景から,本研究では,大学におけるライフサイエンス系研究室において,科学的知識の生産とのコラボレーションの過程を,ヒアリング,インタビュー等の手法を織り交ぜつつエスノグラフィックに記述・分析することによって,高度専門職業人材育成の観点からの社会的課題を抽出する.

それによって,大学の(ライフサイエンス系)研究室を取り巻く諸状況,様々な諸制約を把握するとともに,ポスドクや学生達へのあるべき支援に関する有用な視座を得る.また,他の研究室研究プロジェクトやキャリア開発プログラム等との比較の視点から,理論的のみならず実務的見地から広く研究者コミュニティへの認知をはかりたいと考えている.

 

 
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