科学技術社会論学会シンポジウム 「日本の学術政策における「イノベーション」の拡大―その深層を考える―」日本の学術政策では、第3期科学技術基本計画(2006-)の頃から「イノベーション」重視が拡大してきた。国家予算による学術研究において社会的な有用性を重視することは、その財源からすると当然と言えるかもしれない。しかし、「イノベーション」という観点を重視すると、その出自である技術経営の価値観に偏った評価が促進される可能性が高い。さらに、これに国家レベルでの経済成長戦略による選択と集中が合わさることで、長期的で多様な研究活動が阻害される可能性が懸念される。そうすると、多様な価値創出の阻害につながり、長期的でより本質的なイノベーションの阻害にもつながりかねない。 そもそも日本では、1980年代の「基礎研究ただ乗り」論への対応などを理由として1990年代には基礎研究シフトが課題とされ、世界的な傾向とは逆にイノベーション政策は後退していた。それが、2000年代に入ると、国立大学法人化や、競争的(プロジェクト型)資金の割合の増加、その背後での大学の大衆化や18歳人口の減少、余剰博士問題、そして研究・教育のグローバル競争の拡大などによって、大学の研究と教育を取り巻く状況は大きく変化していった。その中で、さまざまな国際的指標による定量的評価が進められ、政権交代の影響なども受けながら、行政だけでなく大学関係者の問題意識や判断基準、主張、レトリックなども変化していった。これらの要因が、2000年代後半からの「イノベーション」重視の拡大とも連動していることが考えられる。 本シンポジウムでは、このように、日本の学術政策における「イノベーション」の拡大という現象を、経済的・商業的価値観の主導というだけでなく、学術界を取り巻くより幅広い文脈から多面的に検討し、その深層にある本質的な問題点を考えていきたい。 日時:7月11日(土)13時から17時 場所:東京工業大学 西9号館 デジタル多目的ホール プログラム(予定):13:00-13:15 夏目賢一 趣旨説明 13:15-14:00 潮木守一(名古屋大学・名誉教授)「高等教育の大衆化と科学研究」 14:00-14:15 質疑 14:15-15:00 西尾章治郎(大阪大学・教授)「学術研究の総合的な推進方策―文部科学省での審議をもとに―」 15:00-15:15 質疑 15:15-15:30 休憩 15:30-17:00 パネルディスカッション・総合討論 コメンテーター小山田和仁(Science Talks) 中島秀人(東京工業大学) 終了後、懇親会を予定しています。
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最終更新日 ( 2015/07/09 Thursday 10:01:13 JST )
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