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科学技術社会論学会 (Japanese Society for Science and Technology Studies)  
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2021/12/07 Tuesday 00:03:16 JST
 
 
2020年度科学技術社会論・柿内賢信記念賞選考結果 PDF プリント メール

2020年度 科学技術社会論・柿内賢信記念賞選考結果について

柿内賢信記念賞選考委員会
(委員長)横山広美
小林 俊哉
坂田文彦
 田中 隆文
見上 公一
八木 絵香
 (五十音順)

【選考結果】

特別賞 70万円 

小林 傳司  大阪大学名誉教授 
「日本の科学技術社会論の発展と高度化に対する長年の貢献」

奨励賞 30万円

鈴木 和歌奈 日本学術振興会・特別研究員(RPD)(京都大学人文科学研究所)
「iPS 細胞研究の「死の谷」の克服;技術面と社会面からの分析について」

実践賞 30万円

八代嘉美 神奈川県立保険福祉大学 教授
「社会と共創する再生・細胞治療研究の試みについて」

実践賞 20万円

工藤 郁子 
大阪大学 社会技術共創研究センター 実践研究部門 招聘教員
「新型コロナウィルス感染症対策アプリに関するリアルタイム・テクノロジーアセスメントの実践と応用について」

【選考を振り返って】

本年度の柿内賢信記念賞は、新型コロナウィルス肺炎COVID-19の流行下(以下コロナ禍)によって、多くの大学がオンライン講義に切り替え構内立ち入りを制限する緊張感の高い時期に、途切れることなく実施することが重要であるという判断の元、応募をスタートさせました。

コロナ禍という特殊な状況の中であり、運営にあたっては2つの点を変更しました。ひとつは、コロナ禍における科学技術社会論領域の研究を後押しする意味で、従来の研究に加え、新型コロナに関する研究も積極的に支援をすると呼びかけを行いました。全世界がこの問題に立ち向かう中で、我が国ならではの科学的助言の在り方やELSIにも注目が集まっており、特に実践賞・奨励賞に関連の応募があることを期待しました。

2つ目は、周知、審査の完全オンライン化です。応募者も運営側も在宅勤務の方が主であった時期でした。全国的に大学構内の立ち入りが制限をされていたこともあり、昨年度までのようにポスターで全国・他分野に周知をすることはせず、また審査においても書類送付をなくし、すべてPDFとメールで受け付け、途中から印鑑も不要としました。さらに昨年度からの引継ぎもあり、書面審査のみではなく、Zoomでの合議を設けたのも今年からになります。結果として、効率的かつ丁寧な審議ができたと思っています。

このような状態から周知や応募件数について心配をしましたが、応募者ならびに被推薦者は例年並みの18件の応募がありました。推薦・応募をいただいた皆様には、それぞれに例年にないご苦労の中で本賞に期待を寄せていただきましたこと、心より感謝申し上げます。厳正な審査の結果、特別賞1件、奨励賞1件、実践賞2件を決定し、このうち実践賞の1件は、新型コロナに関する研究であり、いずれも高い評価を得て決定をいたしました。奨励賞、実践賞は、それぞれにこれまでの実績を元に新しいテーマへの挑戦を目指しておられます。研究成果の社会実装、STS研究の理論的枠組みを広げる期待をもって決定をいたしました。

残念ながら今回の選に漏れた提案にも、興味深い提案がありました。社会のニーズに応えるのみならず、新しいSTS研究の地平を広げることを後押しすることもまた、本賞の目指すところでもあり、今後も皆様からの多様で積極的な提案を期待しております。

【選評】

■特別賞 小林 傳司 日本の科学技術社会論の発展と高度化に対する長年の貢献

小林氏は科学技術社会論学会を立ち上げ、初代学会長として分野の確立に多大なる貢献をされてきました。

研究業績では科学技術に関する市民による決定を促すコンセンサス会議の試みや、日本に科学コミュニケーションの研究・教育を根付かせる多くの論文、書籍を執筆し、日本の科学と社会の研究をより深化させ後進が続く土台を作り上げられました。2009年の気候変動についての市民会議World Wide Viewsの日本参加に尽力し実行委員長を務められ、2011年の東日本大震災と原発事故後には、エネルギー・環境に関する選択肢に関する討論型世論調査の第三者検証委員会委員長を務められました。2020年新型コロナウィルス肺炎の流行における科学技術と社会の関係についても積極的に発言を行い、研究と同時に実践を通じても社会との関係深化に尽力をされてこられたことも大きな特徴です。行政との関わりにおいては、科学技術振興機構プログラム「科学技術と人間」において領域統括補佐、現在では科学技術振興機構社会技術研究開発センターの上席フェローや文部科学省社会連携員会主査を勤められ、日本全体のSTS研究の基盤を整備、議論を牽引されました。こうしたSTS研究の発展のための活動に加えて、多くの新聞等のインタビュー、記事執筆活動、また著作の中でも『トランス・サイエンスの時代』(NTT出版)は、社会が必要とする科学と社会の複雑な関係を読み解くことに貢献し、社会の期待に積極的に応えてこられました。

以上のことから、研究と実践の両面からの業績、研究コミュニティの立ち上げと育成、行政や大学へSTS研究基盤確立の貢献、広く社会への貢献も含めた顕著な功績は、特別賞にふさわしいと評価をされました。

■奨励賞 鈴木 和歌奈 「iPS 細胞研究の「死の谷」の克服;技術面と社会面からの分析について」

鈴木氏は、iPS(人工多能性幹)細胞研究を例に、2019年ころ当該分野が技術面、社会面で「死の谷」を経験した事実に注目をし、どのようにして危機が回避をされたのかをインタビューや文章資料から明らかにする研究を提案されました。すでに博士論文で関連する十分な研究基盤を築いたうえで、社会的に関心の高い「死の谷」に注目をした人類学的研究は興味深く、広く科学技術全体にもかかる問題であり、STS研究としての理論展開の発展も見据えておられることもあり高く評価をされました。

特に「化学物質とは違って、細胞は生きており状態が常に変わるため、細胞の状態を一義的に定義できない。このことが、橋渡し研究に重要な技術移転や特許の問題をより難しくしている」ことがわかっていることは当該分野の特徴を表しており、今後の研究でこれがどのように位置づけられ議論をされるかは興味関心も高い内容で、奨励賞研究にふさわしいと評価をされました。

■実践賞 八代嘉美 「社会と共創する再生・細胞治療研究の試みについて」

八代氏は、臨床試験に至る研究・開発過程を幅広いステークホルダーを共有する「患者・市民参画(Patient Public Involvement : PPI)に注目をし、患者・市民パネルに科学知識を提供しながら、研究目標の提示を目標にする研究提案をされました。特に、研究の発展が著しい血液悪性腫瘍の研究開発に注目をされています。これまでの十分な実績を元に、超高齢化社会において多い症例にもかかわらず治療関連死亡が多い症例を対象に計画をされた本実践研究は、日本ならではの超高齢化社会における医療の在り方にも一石を投じるものと期待をされ、実践賞にふさわしいと評価をされました。

■実践賞 工藤 郁子「新型コロナウィルス感染症対策アプリに関するリアルタイム・テクノロジーアセスメントの実践と応用について」

工藤氏は、COVID-19流行時の現在、国境往来時に渡航者がPCR検査結果等(将来的にはワクチン接種履歴)をアプリで表示をする電子証明書の世界標準を構想するCommons Projectに参画をし、実装過程について、ELSIの観点から研究分析、助言をする中で、技術ガバナンスの在り方について実践的な研究を提案されました。COVID-19対策として接触アプリをはじめ、安全な人の往来に資する健康証明パスポート構想も提示される中、先駆的な研究になることが評価をされました。

最終更新日 ( 2020/11/25 Wednesday 10:58:48 JST )
 
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