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科学技術社会論学会 (Japanese Society for Science and Technology Studies)  
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2022/12/07 Wednesday 06:13:17 JST
 
 
2022年度 科学技術社会論・柿内賢信記念賞 選考結果 PDF プリント メール

2022年度 科学技術社会論・柿内賢信記念賞 選考結果

柿内賢信記念賞選考委員会

委員長:小門 穂
委員:坂田 文彦・東島 仁・見上 公一
水島 希・山内 保典(五十音順)

【選考結果】

特別賞  

該当なし

奨励賞  20万円

久保 京子 東京大学大学院教育学研究科比較教育社会学コース 博士課程
「大学教員と学生の研究観の相違:『生化学』『タンパク質核酸酵素』の意見記事に着目して」

奨励賞 30万円

小久保 智淳 慶應義塾大学大学院法学研究科 研究員(同研究科博士課程)
「ブレインテックの社会実装を受け止める法理論の構築」

実践賞 30万円

杉山 高志 日本学術振興会 特別研究員(PD)(東京大学生産技術研究所)
「南海トラフ地震の津波想定の多様性に対する住民受容の分析に資するアクションリサーチ」

【選考を振り返って】

新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行が始まりすでに2年以上が経過しましたが、収束には至っておらず、私達は継続的な対応を迫られています。2020年度、2021年度に引き続きコロナ禍のなか、本年度の柿内賢信記念賞も全選考過程をオンラインにて行いました。募集・選考の方針については昨年度と同様に2020年度の変更を継承し、ウェブサイトやメール、SNSを通じた周知活動を行い、申請書もメールによる提出とし、募集期間の延長も行いまして、少しでも多くの方から「科学・技術と社会の問題」に関する研究や実践のご提案をいただけるように努めました。

今年度は最終的に、特別賞2件、奨励賞4件、実践賞4件の推薦と応募をいただきました。ご推薦やご応募くださいました方々に、心より御礼を申し上げます。厳正な審査を行い、奨励賞2件、実践賞1件を決定しました。特別賞につきましては、今回は該当なしと判断しました。なお、今年度も過去2年と同様に、新型感染症対策に寄与する研究や実践を積極的に支援するとの呼びかけを行いましたが、審査の結果選出には至りませんでした。

奨励賞については、科学者養成の場における研究観、神経科学と法の交差という国際的な注目も高い領域における課題と、いずれも今後のひろがりを期待できる研究が、また、実践賞は、津波想定を用いるアクション・リサーチがいかに住民受容を変容させるのかという、科学・技術と社会の関係を実践的に再構築する研究が選ばれ、科学技術社会論の幅広さが再確認されました。残念ながら、今回は授賞の対象とはならなかった研究の提案にも、科学・技術と社会の関係を考える上で重要なものがありました。今後も、みなさまからの積極的なご提案を歓迎しております。

【選評】

■奨励賞 久保 京子「大学教員と学生の研究観の相違:『生化学』『蛋白質核酸酵素』の意見記事に着目して」

久保氏は、これまで生命科学系の大学院生の研究活動や研究室生活に注目した調査研究を行ってきました。今回の研究計画は、大学院教育に対する政策が大きく変化し、研究者と大学院生を取り巻くさまざまな問題が顕在化した2000年代の雑誌記事に注目し、大学院生と研究者の研究観をあぶり出すという取り組みです。研究室における研究者の関係という重要なテーマであり、国内での取り組みが少ないなかで、具体的に対象を絞って比較検討する意欲的な研究計画であることが評価されました。科学技術社会論の観点からも、科学者はいかに再生産されるのか、という視点は大きな価値を持っています。審査では、大学教員と学生の研究観の相違を明らかにするという目的を達成するために、扱うテキストの種類や時期を増やすなど、分析対象とする資料の幅を広げ、より厚みのある研究を目指してほしいという意見もありました。今回の奨励賞受賞を契機に、教育分野から科学技術社会論へも視野を広げ、幅広い場で研究を発展させていかれることを期待します。

■奨励賞 小久保 智淳「ブレインテックの社会実装を受け止める法理論の構築」

小久保氏は、法学と神経科学の両面から神経科学の発展と法をめぐる問題という国際的な注目も高いテーマに取り組んできました。
今回の提案では、「認知過程の自由」を中心に据えて、神経科学が憲法学の基本概念や基礎理論に与える示唆を再点検し、「認知過程の自由」の射程の画定やその核心となるべき概念の構築を目指し、主に、米国における議論のシステマティックレビューと、日本国内の神経科学の研究室のサイトビジットを行います。「認知過程の自由」という概念と研究現場をつなぐ試みが評価され、今後の発展が期待されるとして奨励賞にふさわしいと判断されました。審査では、研究の遂行にあたって、STS的な視点を踏まえること、脳科学をめぐる倫理的課題に関する議論も踏まえることを強く期待するという意見もありました。融合領域的分野の研究として参照されるような研究として発展されることを願っています。

■実践賞 杉山 高志「南海トラフ地震の津波想定の多様性に対する住民受容の分析に資するアクションリサーチ」

杉山氏は、スマートフォンアプリを用いた津波避難訓練を促進する研究や、南海トラフ地震の臨時情報の不確実性をめぐる住民間のジレンマの研究など、地震・津波災害に対するコミュニティ防災の研究を行ってきました。今回は、防災対策の一つとして住民理解に着目し、高知県黒潮町などを対象とし、国立研究開発法人防災科学技術研究所の開発した津波ハザードステーションを用いたアクション・リサーチによって、南海トラフ地震の津波想定の多様性に関する住民受容のプロセスを分析し、津波想定に対する住民理解を深めることを目指すという研究を提案されました。

地震・津波工学の科学技術と社会の関係を分析する重要な取り組みであること、そして研究計画の実現可能性の高さが評価されました。なお、審査では、参加者との対話の機会があるので、住民理解の分析についてはご提案されたアンケートに加えて、会話の内容を拾いあげる質的分析も考慮し、分析対象の幅を広げることも検討していただきたいという意見がありました。住民理解に着目して防災対策を考えるという重要な研究の今後の発展を期待しています。

 
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