www.mamboteam.com
科学技術社会論学会 (Japanese Society for Science and Technology Studies)  
Home arrow 柿内賢信記念賞 arrow 2015年度 arrow 2015年度柿内賢信記念賞研究助成金の選考結果
2017/10/18 Wednesday 21:58:23 JST
 
 
2015年度柿内賢信記念賞研究助成金の選考結果 PDF プリント メール

2015年度 科学技術社会論・柿内賢信記念賞選考結果について

柿内記念賞選考委員会

(委員長)平田光司
柴田 清
夏目賢一
日比野愛子
松原克志
三上直之
(五十音順)

【選考結果】

優秀賞        50万円

九州大学大学院比較社会文化研究院 教授 吉岡斉
脱成長時代における日本の科学技術の社会史についての総合的研究 

奨励賞  40万円

お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科 大学院生 竹家一美
男性不妊の当事者をめぐる「現実」ー泌尿器科医とその患者の語りを通してー

奨励賞  30万円

東京大学大学院理学系研究科 准教授 横山広美
科学の新たなパトロネッジ 科学のクラウドファンディングについての研究

実践賞  30万円

名古屋大学大学院生命農学研究科 准教授 田中隆文
ローカルノレッジを防災・減災に活かすための方策の提案と試行

実践賞  30万円

明治大学情報コミュニケーション学部 教授 石川幹人
疑似科学とされるものの科学性評定サイトを媒介にした科学コミュニケーションの増進

【選考を振り返って】

本年度は優秀賞1件、奨励賞9件、実践賞5件、計15件の応募がありました。応募のほとんどが、研究または実践として価値があり、レベルの高いもので、難しい選考となりました。賞のそれぞれのジャンルの特性を考慮して、科学技術社会論の発展に資するという見地から授賞を決定しました。なお、今年度は優秀賞1名、奨励賞2名、実践賞2名の授賞となり賞金総額も180万円となりましたが、昨年度からの繰り越しがあったためであり、来年度以降には通常の総額となる見込みです。

■優秀賞 吉岡斉 脱成長時代における日本の科学技術の社会史についての総合的研究

「通史 日本の科学技術 1945-1979」およびそれに続く「通史」第5巻と「新通史 世紀転換期の社会史 1995年~2011年」の「通史」シリーズは戦後日本の科学技術を社会との関連で通覧するものであり、科学技術社会論の研究者にとって不可欠の資料となっています。吉岡氏は「通史」シリーズの当初から中心的な役割を果たしてきました。本申請は、2010年代を記述する「新々通史」をそのシリーズの後継として準備するためのものであり、その潜在的意義は高く評価されました。吉岡氏は通史以外でも日本の科学技術史、特に核エネルギー研究開発利用の歴史に関する多数の著名な業績を持ち、なかでも3.11以後に加筆修正されて出版された「新版 原子力の社会史—その日本的展開」は日本の原子力について論ずる場合の必読書とも言えるものになっています。さらに、著作活動だけでなく、政府審議会への参加、原子力市民委員会の立ち上げなど、その研究成果を実践に活かし、またそこから科学技術社会論に新たな視点を提供してくれています。これら科学技術社会論への貢献は選考委員会でもきわめて高く評価されました。これまでの業績、およびそれをふまえた今回の申請は、委員会の全員一致で優秀賞にふさわしいと評価されたものです。

■奨励賞 竹家一美 男性不妊の当事者をめぐる「現実ー泌尿器科医とその患者の語りを通してー 

男性不妊についての認識は、近年大きく変化しており、積極的な検査・治療を促す動きが顕著です。しかし、社会には不妊を女性の問題としてとらえがちというジェンダーバイアスがあり、そのような社会的認識のある中で、男性不妊の当事者は自己のアイデンティティーにかかわる問題に直面することになります。この問題は医療、家族、社会(文化)が複雑にからむものであり、科学技術社会論の研究テーマとして重要なものになると考えられます。竹家氏はまず泌尿器科の医師への聞き取り調査から始め、男性患者への聞き取りを目指す方針です。男性患者への聞き取り調査は協力者の確保が難しいと思われますが、研究を重ねることによって科学技術社会論の今後の発展に寄与する大きな成果が期待できると判断されました。

■奨励賞 横山広美 科学の新たなパトロネッジ 科学のクラウドファンディングについての研究 

日本では科学研究の資金は政府などの公的資金、企業からの委託研究費などが主なものです。しかし、最近「クラウドファンディング」という新しい研究資金獲得法が模索されています。資金の欲しい研究者がネット上に映像などで呼びかけ、支援者をつのるものです。横山氏はこの動きに着目し、その利点と問題点を明らかにすることを計画しています。例えば研究者が公衆に何をアピールするか、それは科研費などのピアレビューに基づく公的資金の場合とはどう違うか、それはどのように公衆に受け取られるか、などについてクラウドファンディングに挑戦した研究者への聞き取り、およびウエッブ上でのアンケート調査によってその潜在的支援者の傾向を探るものです。科学パトロネッジは科学コミュニケーション研究としても新規性があり、この研究テーマからは科学技術社会論、ひいては科学研究のあり方そのものの可能性を占うような成果が期待されると評価されました。

■実践賞 田中隆文 ロ-カルノレッジを防災・減災に活かすための方策の提案と試行

ローカルノレッジは科学技術社会論のキーワードの一つですが、その分析を詳細におこない、さらにそれを社会的に活かすための活動はそう盛んでは無いようです。田中氏は甚大な土砂災害を経験してきた地域に注目し、失われつつあるローカルノレッジを掘り起こし、それらを活用するためにWSの開催や郷土館などでの展示、さらにはそれらを地区防災計画に反映させることを試みる計画です。地区の防災計画を作成するにあたっては「専門家」のアドバイスを受けることが内閣府によって促されていますが、それは往々にしてローカルノレッジとは異なる「専門知」になっています。本申請課題による実践はローカルノレッジと「専門知」の建設的なすり合せを促すものとして、科学技術社会論の観点から大変興味深いものです。なお、本課題は奨励賞に申請されたものでしたが、実践賞としての価値が高いと判断して実践賞による授賞としました。

■実践賞 石川幹人 疑似科学とされるものの科学性評定サイトを媒介にした科学コミュニケーションの増進

石川氏は疑似科学の疑いのある商品などに関し、消費者と科学者(および、将来的には企業や行政)が双方向的に情報交換できるウェブサイト「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」を運営されています。これ自体がユニークな試みとして注目に値するものですが、本申請はこのサイトの中に「疑似科学関連用語辞典」を構築しようとするものです。擬似科学の分析には科学哲学の知見を応用することも不可欠であり、専門的な概念も使用されがちですが、用語辞典を作成することにより擬似科学の議論に多くの人が参入しやすくなることが期待されます。また、サイトの運営自体が科学技術社会論的な科学コミュニケーションの実践として意義深いものです。用語集の作成をさまざまな立場の市民からの意見、評価を取り入れつつ行なうことは、より深いコミュニケーションを目指す実践であり、科学技術社会論への貢献が大いに期待されると評価されました。

 
< 前へ   次へ >
ニュースブログ最新記事
 
Top! Top!