調 麻佐志
先日、理事・監事改選後初めて開催されました2019年度第1回(通算第81回)理事会で科学技術社会論学会の会長(第七代)に選任されました調麻佐志です。2021年3月末日の任期終了まで、2名の監事のご指導の下、藤垣副会長および今後指名予定のもう1名の副会長を含む18名の理事で、学会運営に尽力いたしますので、ご支援をお願いいたします
さて、2001年10月7日に設立されました当学会は再来年10月で20周年を迎えます。これを一つの区切りとする企画等を準備し、さらに次の20年を確かなものにすることが現行役員に求められる主たる責務と考えられます。ところが、設立から国際会議を4Sと共催した2010年前後までほぼ順調に拡大してきた当学会も、その後停滞期を迎え現在会員数は漸減傾向にあります。当然学会活動の見直しも必要ながら、この状況を迎えた原因すべてが学会内部にあるわけではなく、隣接分野を扱う学会、あるいはいわゆる文系学会の多くが活動維持に苦慮しています。むしろ現在日本で生じているアカデミズム全体の危機と連動して当学会を含む各学会の活動が縮小しているようにも見受けられ、それだけに問題への対応が難しいと考えられます。
幸いにも当学会はこれまで財政的に比較的恵まれていましたが、昨年度の総会でお伝えしたようにsustainableな体制を再構築すべき時が来てしまいました。恐縮ですが、詳細は検討中ながらも今年度総会で2011年度より続けてきました年会費の暫定引き下げの取り消しを理事会から提案させていただく見通しです。さらに、財政上はもちろんのこと、将来にはより大きな変革が必要となるかもしれません。そのためにも、皆様のお知恵をぜひお寄せください。
最後に全くの私見ですが、学会の活動だけでなく、日本における科学技術社会論という学問自体が難しい時期を迎えていると私は感じております。その土台が確実でないことを認めながらも、科学が多少なりとも「特別な存在」であることを前提として私達は科学技術と社会の界面で発生する問題について考えてきました。しかし昨今、政治的・行政的意思決定において客観的かつ科学的な証拠の存在が強く求められる一方で、その証拠の「客観性」あるいは「科学性」は権力の都合次第という極めて不健全な状況が発生しております。このような時代の科学技術社会論がどうあるべきかを会員の皆様とともに考えていければと思います。
改めまして今後2年間をよろしくお願いいたします。
科学技術社会論学会ニュースレター2019年度1号(2019年5月24日発行)より転載