科学技術社会論学会について

設立の背景

深刻化する地球環境問題、加速度的に進行する情報化、高度化する先端医療と生命への技術的操作、経済システムのグローバル化とそれに伴う経済格差の増大など、科学・技術と社会の界面で、様々な問題が生じている現在、これら問題群に対して学問的な見取り図を与えることが、社会の差し迫ったニーズとして認識されています。

ここ数年を振り返ってみても、JCO事故、クローン、遺伝子組換え農作物、狂牛病等、科学・技術と社会の界面から生じる問題は増加する一方です。このような状況に対して、各種市民団体やNGOだけでなく、科学者、技術者あるいは行政の側からも、原子力学会による倫理規定の作成に見られるような科学技術倫理(工学倫理を含む)の検討や、遺伝子組換え農作物に関するコンセンサス会議の開催など、科学・技術と社会の「新たな関係」の構築を目指して、さまざまな取り組みが模索されています。また文部科学省においても、本年8月から「社会技術研究イニシアティブ」に基づく研究公募が始まり、科学・技術・社会論研究(STS研究)への期待は高まっています。

日本でも、伝統的な科学史・科学哲学といった研究分野に加え、近年の科学社会学や技術倫理学などいわゆる「科学論」、「科学技術論」と総称される各種学問的営為を総合するSTS研究への取り組みが始まって、ほぼ10年が経ちました。その間、STS NETWORK JAPANとJASTS(科学・技術と社会の会)の設立、各種研究会活動、シンポジウムの開催、98年の「科学技術と社会に関する国際会議」の開催や、海外の学会への数多くの研究者の参加など、着実に実績を積み重ねてきました。その結果、STS的問題への関心を共有する人々の研究の研鑽・蓄積と、国内外の交流が進んだことは言うまでもありません。しかし、21世紀を迎え、さらにもう一歩踏み出し、本格的な学会組織を設立する必要を痛感させられる状況となってきました。

本年6月より、このような学会を設立するべく、設立準備委員会を発足させ、検討を重ねてまいりました。幸い、多数の賛同人を得ることもでき、設立趣意書に掲げました目的のもと、科学技術社会論学会を2001年10月7日に設立する運びになりました。趣意書にもありますように、本学会は、科学・技術と社会の界面に発生している諸問題をできる限り多様な視点から検討することを目指しており、そのためには多様な分野の研究者が参加し、交流する場となることを願っております。

2001年10月7日