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投稿日 2023年4月18日

会長就任の挨拶

綾部広則(早稲田大学)

2023年4月5日の理事会にて第8代科学技術社会論学会会長に選出いただきました綾部と申します。大学院に進学した1993年に科学技術社会論の分野に足を踏み入れてから今年でちょうど30年を迎えました。本学会の設立は2001年ですので、約3分の2の期間を本学会でお世話になったことになります。

この30年間には科学技術社会論に関係する実にさまざまなことが起こりました。95年には阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件、2001年にはアメリカ同時多発テロ事件、2011年には東日本大震災・福島第一原発事故と歴史を揺るがすような大事件が発生しました。2019年には新型コロナウィルス感染症の拡大、2022年にはロシアのウクライナ侵攻が起こり、これらはいまだに終息していません。

こうした事態に対して科学技術社会論が何がしか有効な解決策–––とまではいかないとしても、それにつながるような視点や知見–––を生み出すためには、やはり伝統的な課題に対しても地道に新しい角度から光を当てる作業を続けていく必要があると思います。もちろん科学技術社会論ひとりでこれらすべての課題を扱うことはできませんので、さまざまな関連学会と連携を図りながら取り組む必要があります。ただし、設立趣意書にありますように、本学会が「科学技術と社会の界面に生じるさまざまな問題に対して、真に学際的な視野から、批判的かつ建設的な学術的研究を行うためのフォーラムを創出することを目指」して設立されたことを踏まえますと、本学会には関連学会との連携を図るだけでなく、それらのいわば結節点になるという役割が期待されているように思います。

学会ですので「専門性」を高めることが必要なのはいうまでもありませんが、このように科学技術社会論を専門とする人々と、科学技術社会論を必ずしも専門としない人々(他分野の研究者や実務家、あるいは第6代の柴田清会長がいうところの「趣味」として科学技術社会論に携わる人々)との結節点となることも科学術社会論に求められる重要な役割の一つであり、それは科学技術社会論の認知度の向上や若手の育成にもつながるのではないかと思うところです。

とはいえ、その前に、まずは会員の皆様やボランティアで学会運営を担っていただいている事務局の方々が大きな負担なく活躍できるような態勢をつくることが必要だと思っております。まだ色々と改善すべき点があると思いますので、ぜひ忌憚のないご意見・アイデアを賜れば幸いに存じます。2年間どうぞよろしくお願いいたします。