科学技術社会論学会公開シンポジウムを以下の通り開催します。会員の方もそうでない方も、どなたでも無料でご参加いただけます。ぜひ積極的にご参加ください。
「ジェンダード・イノベーション:研究開発における社会的公正の可能性と課題」
近年、ジェンダード・イノベーション(Gendered Innovation, GI)が世界的に注目されています。これまで暗黙のジェンダー・バイアスによって見えてこなかった諸問題が、医療などの生命科学分野の基礎研究から工学分野の技術開発に至るまで、さまざまな事例を通じて明らかになってきています。また、科学史研究によってもこのようなバイアスの解明が進められてきました。その結果、GIはジェンダー平等や多様性の改善といった社会的公正のための理念や手段としてだけでなく、実益をもたらしてくれる自然科学に基づくイノベーションの新しい指針として、企業や国家からの期待を集めるようになっています。日本でも、第6期科学技術・イノベーション基本計画において初めてGIの文言が明記され、さらに女性版骨太の方針2024では様々な分野におけるGIの推進が盛り込まれました。その一方で、社会的な期待とともに多様な利害による政策誘導や商業化が進められることで、GIの本来の特徴が曖昧になり、女性目線の導入という従来からの指針に目新しいタイトルをつけただけのものになったり、さらにはステレオタイプな社会的不公正を再生産するようなものになったりする懸念も生じています。そうなると、せっかくのGIの可能性が損なわれかねません。本シンポジウムでは、このようなGIの可能性と課題について、とくに社会的公正という観点から検討します。
登壇者として、佐々木氏には、生命科学分野でGIが展開されてきた経緯を学術誌の動向なども交えて報告いただくとともに、日本や韓国における近年の政策動向についても報告いただきます。村瀬氏にはこの分野をリードしてきたEUの動向について報告いただきます。鶴田氏には、GIがその理念として掲げる社会的公正をいかにして実現しようとするものなのかを、とくに構造的不正義の是正という観点から報告いただきます。標葉氏には自らの科学コミュニケーション実践やSNS分析を通じて、「フェムテック」という言葉が誘引しうるイマジナリーとそこからみるGIの課題について報告いただきます。そして、隠岐氏をコメンテーターとして、これらの報告を踏まえた総合討論をおこないます。
なお、学会としては、この分野に取り組んでいる会員の研究成果を幅広く共有することでその研究活動を支援したいと考えていますが、シンポジウムの開催時間は限られています。GI関連の研究に取り組んでいる方は、ぜひその研究成果を科学技術社会論学会の年次研究大会や学会誌『科学技術社会論研究』でご発表いただき、さらなる議論を促していただければ大変ありがたいと考えています。
- 開催日時:2024年9月28日(土)13:00–16:45
- 開催場所:国際基督教大学 東ヶ崎潔記念ダイアログハウス 国際会議室
トロイヤー記念アーツ・サイエンス館(場所を変更しました。リンク先地図の18番建物の2階です) - 参加費:無料(科学技術社会論学会の非会員の方も無料でご参加いただけます)
- 定 員:会場110名、オンライン500名
- 参加資格:どなたでもご参加いただけます。科学技術社会論学会の会員である必要はありません。
- 参加申込:いずれの参加方法(現地参加/オンライン)を希望される場合にも、下記のアドレスから事前に参加登録してください。
- https://jssts.disaster-education.info
- ※現地参加の事前登録は9月25日(水)まで受け付けます。それ以降は、座席に余裕があることが見込まれる場合は、当日会場での参加登録を受け付けます。当日の受付を行うか否かは上記のWebsiteに9月26日(木)に掲載いたします。
- ※オンラインの参加登録は同時接続上限に達しない限りは、シンポジウム終了時刻まで受け付けます。オンライン参加希望の方には、ご登録いただいたメールアドレス宛にZoomリンクが記載されたページのアドレスをお送りします。
- 問い合わせ先:2024年度科学技術社会論学会シンポジウム事務局
謹告 夏目賢一さんは9月6日に逝去されました。関係者一同、謹んで哀悼の意を表します。本シンポジウムは、夏目さんのご遺志に可能な限り沿った形で予定通り開催します。なお、後任の司会等については現在対応を検討中です。
2024年10月31日追記: シンポジウムは、夏目さんのご遺志にできる限り沿った形で当初の予定通り開催しました。当日、夏目さんが担当する予定だった司会や趣旨説明については、全体司会を山口富子(国際基督教大学)、趣旨説明と総合討論のモデレーターを隠岐さや香(東京大学)が担当しました。(下記のプログラムは当初の予定のままとしてあります)
プログラム
- 13:00–13:15 会長挨拶・趣旨説明:綾部広則、夏目賢一(司会)
- 発表(各計35分、事実関係の質疑5分含む)
- 13:15–13:50 佐々木成江(横浜国立大学/東京大学)「生命科学におけるGIとその科学技術政策への展開」
- 13:50–14:25 村瀬泰菜(東京大学)「EUにおけるGIの展開と課題」
- 休憩(10分)
- 14:35–15:10 鶴田想人(大阪大学)「GIは構造的不正義を是正しうるか」
- 15:10–15:45 標葉靖子(実践女子大学)「フェムテック等をめぐる社会技術的想像からみるGIの課題」
- 休憩(15分)
- 16:00–16:40 総合討論:登壇者4名、隠岐さや香(コメンテーター)
- 16:40–16:45 閉会挨拶
主催:科学技術社会論学会
後援:研究・イノベーション学会、国際ジェンダー学会、日本科学史学会、日本工学会、日本工学教育協会、日本女性学会(50音順)
シンポジウム企画担当:隠岐さや香(東京大学)、城下英行(関西大学)、三上直之(名古屋大学)、山口富子(国際基督教大学)