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投稿日 2021年11月27日

学会20周年国際シンポジウム開催報告

  • 開催日
    2021年9月23日

JSSTS 2021 and Beyond -「科学技術と社会を再考する」

科学技術社会論学会20周年記念プログラム 国際イベント実行委員長
山口富子

本学会設立 20 年を記念し、国際シンポジウム”JSSTS 2021 and Beyond -「科学技術と社会を再考する」”を2021 年 9 月 23 日に開催しました。シンポジウムのねらいは、科学技術と社会の「新たな関係」を模索する事であり、プログラム前半では、本学会の前会長である藤垣裕子氏、Society for Social Studies of Science (4S)の前学会長 Joan Fujimura 氏、European Association for the Study of Science and Technology (EASST)の学会長 Ulrike Felt 氏にご登壇いただき、国際的な視野からこれまでの STS という研究領域を振り返って頂きました。シンポジウム後半では、ライトニングトーク形式を取り入れ、日本、韓国、中国、台湾、アメリカ、オーストラリア(登壇順)の研究者らが、近年の STS 研究の動向、また STS のアプローチなどについて各国の取組を中心に話題提供をして頂きました。オンライン形式の国際プログラムであり、また STS のこれまでとこれからという遠大なテーマについて短い時間で話をまとめて下さいという無理難題をお願いする事になったのですが、登壇者の力量に助けられ、結果として視聴者の皆さまには、STS という研究領域の広さや研究の多様性を感じ取って頂けたのではないかと思います。同時に、お互いの研究について建設的な批判を通して高め合うというSTSers の研究態度も感じ取って頂けのではないかと思います。

今回のシンポジウムの実施にあたり、科学社会学会、科学史学会、科学基礎論学会、日本社会学会、日本
リスク学会、研究イノベーション学会、国際技術哲学学会、4S、TransAsiaSTS Network 等(順不動)の協力を得て、広くシンポジウムの告知をさせて頂きました。関係諸学会の皆さまのご協力のおかげで、日本、アメリカ、イギリス、台湾、タイ、ニュージーランド、シンガポール、オーストラリア、中国、韓国、カナダ(順不同)から 157 名の登録がありました。約 6 割が本学会の学会員、4 割が非学会員です。この場をお借りしてシンポジウムの告知にご協力頂きました、関係諸学会の皆さまに感謝を申し述べたいと思います。

シンポジウムでの議論の詳細は、科学技術社会論研究で改めてご報告致しますが、ここでシンポジウムのテーマについて簡単に振り返らせて下さい。実は「科学技術と社会を再考する」というシンポジウムの副題は、2001 年 10 月 7 日に本学会が設立された後、2002 年に創刊された『科学技術社会論研究』の特集号のタイトル『「科学技術と社会」を考える』から着想を得たものです。本学会初代学会長である小林傳司氏は、その創刊号で「科学技術の巨大な営みと社会の多様なセクターがどのように関わっているのか、またそのような時代におけるトランス・ディシプリナリーな研究とは」という問題提起をされていますが、科学技術社会論研究はこの 20 年間、その問いの答として着実な成果と経験を蓄積してきたと感じます。

今回、シンポジウム冒頭挨拶で本学会の現会長調麻佐志氏は、20 年の議論を経て蓄積されてきた多様な考
え方、多様なアプローチをどのように受け止めるのか。また何をどう批判的に捉えていくのかという、トランス・ディシプリナリーな研究ならではの問題提起をされております。次の 20 年はこれに呼応するような形で研究が蓄積するのではないかと思います。確かに 20 年の時を経て、科学技術と社会の関係性の捉え方が多様化したという点は、私も同感です。今では、科学技術研究そのものを批判的に捉えるというアプローチから、RRI に代表されるような研究者らと協働し科学技術研究のあり方を検討するというアプローチ、また科学技術政策の現場や科学コミュニケーションの現場に深く関与し、科学技術と社会の関係性について実践を通して検討するアプローチまで、その基盤となる考え方や進め方が異なるアプローチが混在するようになりました。このような中、これらをどう受け止めるのか、また科学技術の何をどう批判的に捉えるのかという問いは、これからの STS という研究領域にとってとても重要なものでしょう。今回のシンポジウムを通して、これらを確認できたという事は、(少なくとも個人的に)大きな収穫であり、成熟期に入った STS という研究領のあり方について引き続き議論できればと思います。

上段左からJoan Fujimura氏、Ulrike Felt氏、藤垣裕子氏。Emma Kowal氏、調麻佐志会長、山口富子。

科学技術社会論学会ニュースレター 2021 年度2 号(2021 年11 月27 日発行)より転載