このたび2019年の3月までの任期で本会会長を務めることになりました。藤垣前会長をはじめ、歴代の会長は本会を代表するのに相応しい学術業績を残されてきた方ばかりであったのに比べ、「STSは趣味」と言ってきた人間がこの職につくのには、当の本人も少なからず違和感があります。幸いなことに、歴代の会長および理事会の皆様の努力のおかげで、本会の運営は離陸期を終え、社会的認知も高まり、堅調な巡航状態にあるといえます。英傑に率いられる時代は終わり、会員の誰もが会の今後に関わる時代に移ってきたのかもしれません。まずは、安定を停滞に結びつけないことが、課せられた最も重要な責務であると感じています。
さて昨今の世情を見れば、偽情報が飛び交い、気に入らない情報は無視して好ましい情報のみを拡散し、同調者集団で心地よく固まる、そういった相互に孤立した同調者集団が無関心層の海に浮かぶ様相が目につきます。その状況を作り出したのは技術であり、科学も作り出された知の揺らぎに信頼を失いつつあるようにも見えます。科学技術と社会の問題は、知の在り方の問題として、ますます広がりと深さを増しています。それに対し、本会はフォーラム、すなわち開かれた討議の場としての役割をさらに発展させていかなければなりません。
自由にしかし責任を負いながら会員が発言・行動し、社会的問題の解決や学術の深化に貢献する場としての学会づくりに努めていきたいと考えています。特に具体的には、①学会誌の改革;発行の遅れは編集員会の努力により挽回されつつありますが、さらに会としての発信情報の質の保証と多様性の確保を両立させる方法を探りたいと思います。②学会ホームページの充実:会の内外へ向けたタイムリーな情報発信ができるよう再構築を図ります。さらに、③学会20周年に向けた企画、④法人化の是非に関する結論も今期中に得たいと考えます。数多い学会の中でも、本会が会員の皆様にとってかけがえのない存在となれるよう心掛けていく所存ですので、ご協力をよろしくお願いいたします。
2017年6月 柴田 清(千葉工業大学)
科学技術社会論学会ニュースレター2017年度1号(2017年6月20日発行)より転載