会長 中島秀人
理事会での選任を受けて、本年度4月より2年間、科学技術社会論(STS)学会の会長を務めさせていただくことになりました。よろしくお願い申し上げます。
本学会も設立から8年が経過し、来年8月末には、アメリカを中心とする4S(国際科学社会学学会)の年次大会を共同開催することが決定しています。これをきっかけとして、国際的なプレゼンスを持つ組織として、大きく飛翔することが期待されます。
本学会は、歴代の会長のリーダーシップと会員の皆様の努力により、比較的順調に発展してきました。しかし、いくつかの問題点も明らかになってきました。例えば、学会規約にいくつかの細かい不備があり、理事選挙の実施や、事務局体制の構成に困難や不透明さがあることなどが判明してきました。また、事務局長個人に過大な職務が集中するなど、体制の見直しも必要だと分かりました。体制の不慣れや不備もあり、学会誌の刊行の遅れが続いてきたことも、皆さんご承知の通りです。
事務局につきましては、定型業務の外部への委託を理事会で昨年度時間をかけて検討し、本号でご案内のとおり開始しました。学会誌につきましても、今年度中には遅れをほぼ解消できる予定です。このように、問題点を一つ一つ明確化した上で解決し、節目の十周年を迎える必要があります。
私、学会設立時よりほぼ連続して理事を務めさせていただいていますが、海外での長期の研究のため、途中で二年間だけ理事会から離れていた時期があります。その際に痛感したのは、理事でない会員にとっては、学会がいま何をやろうとしているのかが非
常に分かりにくいということでした。学会の姿が見えるのは、年次研究大会などのごく例外的な時だけです。このような問題を解決するには、ニューズレターの刊行回数を増やしたり学会のホームページの更新を定期的に行うなど、情報の流通をよくすることが必須かと思われます。この点につきましては、早急に取り組みたいと考えます。
もう一点、任期中に重視したい活動として、東アジアにおける科学技術社会論の振興があります。東アジア地域では、中国本土、台湾、韓国、日本の四者で、2000年から非公式のネットワークの交流を行ってきました(東アジアSTSネットワーク)。また、台湾が中心となって、東アジアのSTSの英語の学術雑誌が、2007年からオランダのシュプリンガー社より出版されています(EASTS Journal)。これらの活動には、本学会の少なくない会員が個人として参加していますが、本学会が学会の活動としてどのように貢献していくかの議論を開始していく時期が来たと感じています。
学会の活動はいずれも、会員の皆様の積極的な参加によって実現していきます。理事会に、ぜひ皆様の声をお寄せください。学会活動が充実し、現在の600名弱の会員からさらに発展し、1000人規模の組織として、社会に貢献できればと考えます。
2009年5月10日
科学技術社会論学会ニュースレター2009年度1号(2009年5月25日発行)より転載