小野田敬(白桃書房 2024/1/26)
本書は、NMRや放射光などの大型施設が外部の研究者に利用を促す「共用促進」がもたらすジレンマに焦点を当てている。巨額予算がかかりスタッフの手もいる施設は、外部の利用者にとってはありがたいが、内部の研究者にとっては、支援は業績になりにくく、支援スタッフのキャリアは必ずしも明確ではない。
そもそも日本は、欧米と異なり、テクニシャンや工作・加工スタッフの地位確立が行われないまま現代に至っている。著者の博士論文の成果となる本書が大変興味深いのは、そうした日本の特徴が、技術開発と研究の境がなくなってきた最近の研究にプラスに働く可能性を示していることだ。オープンイノベーション研究のひとつとして、そして希少な大型科学施設研究として注目の書である。
【横山広美】