アレックス・シザール 著 柴田和宏 訳(名古屋大学出版 2024/3/10)
本書は、19世紀英仏の科学的権威が科学論文というフォーマットに当初抵抗し、その後受容し、さらに変容させた過程を主に記述する。そこでは(私にとっては衝撃的なことに)「17世紀にオルデンバーグが創刊したフィロソフィカル・トランザクションズが現代の科学ジャーナルの原型である」という通俗的な理解が適切でないことも明らかになる。本書は、科学史の一級の成果であるとともに、科学(的知見)の正当化、政治性、プレプリントやOAジャーナルといった科学出版のあり方など、STSにとって重要な諸問題について新たな視点を提供する。
【調 麻佐志】