イチョウが降りしきる東京大学本郷キャンパスで、2日間にわたって第23回年次大会が執り行われました。申込者数は締め切り直前に急激に伸びて310人と過去最高になり、一般セッション26、オーガナイズドセッション13の計39セッションの大変盛況な大会となりました。
1日目午後の大会企画シンポジウムは、9月に急逝された故・夏目賢一理事企画の「懸念への力学~安全保障と研究者~」というテーマで、小林信一氏(広島大学)、伊藤憲二氏(京都大学)、綾部広則会長(早稲田大学)の講演が行われました。安全保障の研究が増えていく中で、なかなか言語化しにくい「懸念」を議論する企画は注目を集め、会場の小柴ホールに多くの人が集まりました。この企画では、隠岐さや香氏(東京大学)の司会のもと、安全保障をめぐる多様な立場や意識について議論が交わされました。
続いて総会、柿内賢信記念賞の授賞式、特別講演会が行われ、夜の懇親会には100人を超す会員が参加をして交流を深めました。2日目はすべての枠が一般発表とオーガナイズドセッションで運営され、どの教室も多くの参加者でにぎわいました。
今年度の大会運営は様々に難しい点がありました。ひとつは会場費が高かったことです。例年、無料の教室で運営することが多かったので、予算面での心配が大きかったですが、申し込み数が多かったことに助けられ、なんとか赤字を出さずにすみました。
また、STSは科学と社会に関する論争的テーマも扱いますが、真に学術的意義を生み出すためには、問題の明確化とアカデミアならではの作法が必要になり、暗黙のルールを逸脱しない仕組みづくりの検討が必要だと感じました。
参加者が過去最高になったのは地の利もありますが、各講演やセッションの学術的魅力があってこそのことだと思います。発表者、参加者、そして大会実行委員をはじめ関係者の皆さんに心より感謝申し上げます。
来年もぜひ、大会でお目にかかりましょう。
(文責: 横山広美)