科学技術社会論学会理事会は、令和7年(2025年)4月15日に日本学術会議から発表された声明「次世代につなぐ日本学術会議の継続と発展に向けて:政府による日本学術会議法案の国会提出にあたって」に賛同することを表明いたします。
2025年5月2日 科学技術社会論学会理事会
賛同表明への解説
科学技術社会論学会理事会は、去る2025年5月2日、同4月15日に日本学術会議が発出した声明「次世代につなぐ日本学術会議の継続と発展に向けて:政府による日本学術会議法案の国会提出にあたって」に賛同することを表明しました。
以下にその理由を述べつつ、日本学術会議のような「アカデミー」の意義や役割についての見解を示します。
日本学術会議は2021年4月の総会において「ナショナル・アカデミーの5要件」(以下、5要件)を示しました。この5要件とは、①学術的に国を代表する機関としての地位、②そのための公的資格の付与、③国家財政支出による安定した財政基盤、④活動面での政府からの独立、⑤会員選考における自主性・独立性を指します。同会議がこの要件を示した際の資料は、「アカデミー」の意義や役割について、「多くの先進国には国を代表するアカデミーが存在し、時々の政権や政治的・社会的・宗教的諸勢力からの独立性を保ちながら、科学的な見地から問題の発見と解決法を提示したり、社会の未来像を提言したり、国際的な連携活動を通じて科学の共通認識を形成したりしています。」と説明しています。
こうしたアカデミーの意義や役割は、歴史におけるたくさんの紆余曲折、時には社会にとって好ましくない結果をもたらした出来事の教訓も踏まえて形成されてきたものです。それは学術、あるいはそれを担う研究者自身にとってばかり都合がよいものということではなく、社会にとって学術が果たすべき役割を先人が追求した結果でもあることは見逃せません。
5要件は各国の社会とアカデミーがそれを実現するために腐心して整えてきた現在のしくみが備える要素を整理してまとめたものであり、国際的に共有されているものです。そして、そのいずれかが欠けるだけでもアカデミーが本来の役割を果たせなくなる重大な懸念が直ちに生じます。すなわち、先人が積み上げてきたものを途端に失うことになり、その結果を社会が引き受ける結果となることが多いに心配されるのです。
今回、日本学術会議が発出した声明は、政府が国会に提出した法案においては5要件のうち特に④や⑤について、諸外国のアカデミーや従来の日本学術会議のあり方と比べてもそれが十分に満たされなくなる懸念が極めて大きいことを指摘し、再考を求めたものです。
科学技術社会論は、過去のアカデミーをめぐるいきさつを明らかにしてきた歴史学の研究も含む様々な学術上の分野に基礎を置きながら、社会と学術のよりよい関係を追求してきた分野です。社会にとっても学術にとっても望ましいアカデミーのありようを擁護することに大きな責務があるものと考えています。このため、日本学術会議が発出した声明が示した懸念を共有し、賛同を表明したものです。
(2025年5月15日 追記)