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投稿日 2025年9月22日

2025年度学会シンポジウム「揺れる気候対策:トランプのアメリカと知の秩序の再編」開催のお知らせ

  • 開催日
    2025年10月26日

第2次トランプ政権は人為起源の気候変動に公然と疑義を呈し、官民を問わず脱炭素の枠組みから離れる動きが出ている。また、研究機関への資金提供停止も危惧されており、観測データの途絶は長期間にわたる気候対策にきわめて大きな影響を与えるだろう。
これらを無知や無理解の帰結と難じることはたやすい。しかし、あらためて科学・技術・社会の相互作用として事態をとらえることで、その背景、何よりもこうした動きを支持する人びとの考えについてより深い洞察を得ることはできないだろうか。
本シンポジウムでは、まず、江守氏からトランプ政権の気候政策とその影響について解説していただく。そして三井氏から、2016年の大統領選などの取材に基づく『ルポ 人は科学が苦手』(光文社新書 2019)もふまえつつ、現在のアメリカ社会の動向について話題提供をしていただく。
これらの情報やパネルディスカッション、会場との質疑を通して、独立性・自律性をたもちつつ、社会とともにある科学技術のあり方の再構築を展望したい。

実施概要

日時: 2025年10月26日(日) 10:00-12:30
会場: オンラインのみ(zoomウェビナー。申込み後、開催までにお知らせ)
主催: 科学技術社会論学会
後援: 環境社会学会,研究・イノベーション学会,日本科学技術ジャーナリスト会議,日本科学史学会,日本地球惑星科学連合,日本リスク学会(50音順)
参加: 会員・非会員問わず参加可。事前申込み制。参加費無料

プログラム

開会挨拶

10:00-10:05
山口富子(科学技術社会論学会 会長/国際基督教大学 教授)

 

 

 

講演1:トランプ政権で主流化する気候変動懐疑論・否定論

10:05-10:50
江守正多(東京大学 未来ビジョン研究センター 副センター長/教授)
プロフィール:
気候科学者。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。1997年より国立環境研究所に所属し、地球温暖化の数値シミュレーションや気候変動リスク評価に関する研究に従事。気候コミュニケーションの実践にも取り組み、IPCC第5次および第6次評価報告書の主執筆者を務めた。テレビや新聞などメディアを通しての発信だけではなく、SNSでの発信も積極的に行っている。

講演2:アメリカ社会と科学不信

10:50-11:35
三井誠(読売新聞 東京本社 調査研究本部 主任研究員)
プロフィール: 
京都大学理学部を卒業後、読売新聞社に入社し、科学部やワシントン支局などを経て現職。ワシントン支局時代(2015-18年)に、「トランプ大統領誕生」を経験。地球温暖化を否定する大統領に驚き、アメリカの科学不信の現場を訪ね歩く。その取材成果をまとめた『ルポ 人は科学が苦手』(光文社新書 2019)で「科学ジャーナリスト賞2020」を受賞。21年から同賞選考委員。20年から慶應義塾大学大学院で非常勤講師も務める。

パネルディスカッション

11:40-12:25
パネラー:江守正多・三井誠・山口富子
司会:  寿楽浩太(東京電機大学 工学部 教授)
プロフィール: 
専門は科学技術社会学。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。東京大学特任助教、東京電機大学助教、同准教授を経て現職。原子力の問題を主要なテーマとしており、共著に『原発 決めるのは誰か』(岩波書店 2015)、『核のごみをどうするか』(岩波書店 2023)等がある。

閉会挨拶

   12:25-12:30
   山口富子(科学技術社会論学会 会長/国際基督教大学 教授)


登壇者プレインタビュー

司会 当日はどういったお話になりそうでしょうか。

江守 まず地球温暖化の科学的内容と、それに対する懐疑論・否定論について簡単に説明します1, 2)。その上で、懐疑論・否定論の文化・政治的背景についての認識を述べる予定です。このような懐疑論・否定論が政権の中枢に入っているというのが、昔と今の状況の違いです。それが今後もたらす意味についてお話できたらと考えています。

三井 地球温暖化が科学の議題ではなく、文化・政治的な議題になってしまっているというのはその通りですね3, 4)。第2次トランプ政権ではワクチンについても政治的な圧力が加えられ、科学への信頼が失われてきています。科学不信の背景は、政治的な思惑のほか、ネット上にあふれる偽・誤情報も一因とみられます。

寿楽 今回のテーマは、市民参加や科学の民主化と専門知の関係など、科学技術社会論にも多くの問いを投げかけるものだと思います。当日は幅広く議論できればと思います。

山口 認識上の権威(epistemic authority)の問題に関しては、日本でも社会、市民が学術界を見る目がかつてとは変わってきていることを感じます。参加者の皆様からの質問も交えながら考える機会にできればと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

参考情報

  1. 江守正多「組織的な温暖化懐疑論・否定論にご用心」(国際環境経済研究所 2020.3.10)
  2. 江守正多「ホッキョクグマは増えているのか―気候変動懐疑論再考」(Yahooニュース 2023.1.12)
  3. 三井誠『ルポ 人は科学が苦手』(光文社新書 2019) 米国の科学不信の現場を取材した新書。地球温暖化を疑う人たちの本音も紹介している。
  4. 三井誠「分断が進む米国に見る科学リテラシー普及への道筋〜コロナ禍で科学をどう活かすか?~三井誠(前篇)」(スマートニュース メディア研究所 2021.09.16)